ここしばらく、トンヘは眺めることに余念がない。

あらゆる方向から謎の立体をためつすがめつしている。

中になにが入っているか?

そのようなことにかれの関心があるわけではない。

トンヘはこの立体が空洞であることを知っている。

だが、はたしてそうだろうか?

だんだん、かれは確信がもてなくなってきている。

そもそも、この立体をどこでどうやって手に入れたのか、

トンヘはそれをすっかり忘れてしまっている。

憎まれっ子トンヘが生まれ育った国。

それがまるごとこの立体の中におさめられると知ったら…。

なつかしさのあまりトンヘは動転して泣いてしまうおそれがある。