アハッ、見っかっちゃったか。
ほら、こっから階段の影を見てやろうと思ってさ。
きみも、おいでよ。
思ったとおり、きれいに0がならんでる。いい眺め。
こわいの?
まあ、このタムタムはちょっと急だからね。はじめはゆっくり来るんだよ。
いいかい。
このタムタムを構成しているのは、このセヘト。
わかんない? そーだな。
じゃあ、ぼくの好きなこの数でやってみようか。
この89が無限にシャンしていくセヘトを使うんだ。
シャンってのは、みづからにみづからをかけあわせること。つまり、
セヘトの律はこう書ける。
この右肩の n に1をすわらせると、
どんな数も0乗するとアーになる。
これはぼくたちがマホラとかわした約束。だけど、1だけじゃ、とても階段とはいえない。
2段目の数は、そうこれ。
この二つの数をつかって、ほら。
きみは、ビギナーだから、下降階段にしてあげたよ。これなら、ぜんぜんこわくないだろ?
で、なんでぼくらが、こんな階段をつくるかっていうとね、影のかたちをしらべたいからさ。
1 8 9。
そう、これがこの階段の影のかたち。
でも、まだまだ、これからさ。セヘトンをどんどん積んでいって、うんとうんと高くしなきゃ。
つぎはこのセヘトンをつかうよ。
ステップの幅は数2つ分。
そう。タタータのタムタムだ。
そうそう、足していくときは、くりあがりも忘れちゃダメ。
よし。3段目が完成。
コツがつかめてきた?
じゃあ、4段目はきみがやってみる?
ううん。ぼくらの国には、パパッって、つくれちゃう子もたくさんいる。それも ∞個のセヘトンをつかってね。みんな、うんと練習するんだ、ほら、美しい影を見つけて、だれかに自慢したいだろ。
いまつくってる89n-1のセヘトの無限階段の影は、ぼくらの国ではかなり有名。きみもきっとびっくりする。わかりやすいように、数に色をつけてみようか。
階段をつくってる、この10種類の数。
たとえば、こんなふうに∙∙∙
そうすると、ぼくたちの階段は、
すっごい、カラフルだろ。
もちろん、階段には0~9の10種類の色がぜんぶあらわれるよね。
じゃあ、影のほうはどうなると思う?
おなじようにカラフルになる?
ふつうはそう思うよね。
ところが、どっこい。
影の中には、まったくあらわれない色がある。影の長さは無限なのに、だよ。
信じられるかい?
この中のどれかの色は、一どだって、影の中にあらわれない。
何色がそうだと思う?
あてずっぽだってかまわない。
3つまでいってもいいよ。
ひゅー。
きみがいったその3つ、ぜんぶあたりだよ∙∙∙
ううん。じつは、あらわれる色は、
たったの2色なんだ∙∙∙
しかも、この二つの色はかわりばんこに
あらわれる。
どうせ、信じてないんだろ?
ぼくだって、はじめはそうだった。
そうさ。11のアーンクが、ぼくに
ザザーンの詩を語りはじめるまではね。