あれは、ぼくがピテのセヘトであそんでたときのことだったよ。
知ってるだろ。あの伝説の〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟が
ぼくのセヘトを盗みにやってきたんだ。
もー、びっくりしたよ。
まえから、ぼくは会ってみたいと思ってたんだ。
旅人のセヘトをかってに盗むようなやつ、ぼくは、ぜったい許せないからね。
でも、みんな口々にいうんだ。
「あの若者は、魔法のように美しく、私のセヘトを消し去った∙∙∙」
うっとり、ためいきまじりにね。
だから、ぼくは知りたかった。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟が
どうやってぼくのピテたちを消すのか。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は
まず、この二つの数を、ぼくにつきつけたんだ。
ううん。それをこんなふうに広げた。
これからはじまるんだな、ってぼくは用心したよ。
そして、すごくワクワクした。
ぼくの1から4のピテがねらわれてる。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は
いきなり天をゆびさした。
パパラマーヌ!
うん。そんなふうに唱えたように聴こえたよ。
パパラマーヌ?
ぼくも知らないわけじゃない。
かけあわせて、マーの呼吸で継ぐ。
たしかそうだったよね。
あっ! ぼくは、叫んじゃった。
0。そうなんだ。ぼくのピテたちがあとかたもなく∙∙∙
しまった!
もう、べつのピテがねらわれてる。こんどは5から8だ!
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は
また天をゆびさした。
パパラマーヌ!
ひゃっ。
なんてことだ!
ぼくのピテがまた消えた∙∙∙
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は
びっくりしているぼくに、遠慮なんてしなかった。
気づくと、こんなことまで∙∙∙
ちくしょーっ!
ぼくは、くやしくなった。だから、ギーを出した。
いいんだもん。ぼくはギーであそぶから。
へっちゃらな顔をするのはたいへんだった。
でも∙∙∙
でも、〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は
こんどは、ぼくのギーをねらいはじめたんだ。
だいじょぶかな。だいじょうぶだよね。
でもまさか∙∙∙
ぼくののどは、つばでゴクッとなったよ。
でもなんで∙∙∙。なんでギーも消えちゃったの?
しょーがない。
ぼくは、おぼえたばかりのシャンのセヘトを出すことにした。
このセヘトはピテやギーのセヘトとはつくりの次元がちがう。いくらなんでも、シャンだったら、じぶんでじぶんのことを守れるにきまってる。
しばらく、なにも起きなかった。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟がじーっと、ぼくのセヘトを見つめているのが気になった。やっぱり、ねらってるんだ。
やめてッ!
ぼくは、そういったよ。
でも〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は、おかまいなしだった。
パパラマーヌ!
ぼくは泣きそうだった。
そして、すごくうれしかった。
ドキドキしているあいだにも、〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟がぼくのシャンをどんどん盗っていく。
ああ。10から13のシャン。かわいそうだけど、もうすぐおまえたちも消えちゃうんだよ。どこかもわからない世界に∙∙∙
セヘトンたちはへいきそうだった。
っていうか、よろこんでいるように見えた。
ほかのみんながいっちゃったところにいきたがってるみたい∙∙∙。
パパラマーヌ!
はあ。さよ〜なら〜∙∙∙
いや。だめだめ。返してよ。
ぼくのセヘトンだよッ!
ぼくはムキになって叫んでいた。
そしたら、〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟は、
ちゃんと4つのセヘトンを返してくれた。
そして、それにアーのゆびでふれていく。
なにをする気?
うそでしょ∙∙∙
パパラマーヌ!
どっ、どっ、どっ、どーして???
ぼくは、わからなさすぎて、おどりたくなった。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟が
いま、おどっている、あのヘンテコな踊りを。
〝虹色のデカい髪をもった偉大なる若者〟の
あの、奇妙キテレツなステップには、きっと意味があるにちがいなかった。
そっか! ぼくになにかを伝えようとしているんだ…