さて、アダマール行列4乗根体の正負反転体❶~⓰型変換によるグループ化は、まだ端緒についたばかりである。
方針としては、ここから任意の格子体を選び、それと正負反転体❶~⓰型とのアダマール積をとる。ただそれだけで16個の変換格子体から成るグループが形成。具体的には、
今後は、ここで得られた16個の格子体以外からふたたび、任意に一つの格子体を選び、おなじ作業をくりかえしてゆく。そうやって、総勢192種のすべてのアダマール行列4乗根体をとりつくせれば、グループ化作戦は大成功、という段取りである。
よいスタートがきれたのだ。
うまくゆきそうな気配しかない。
ところが、である。
わたしたちは、すぐに一つの大きなミスを犯していることに気づくことになる。
いや、ミスというよりは単純な見落とし。
いや、アダマール行列4乗根体により仕掛けられた罠、というべきか。
なにか?
すでにわたしたちが入手した〝正負反転体❶~⓰型対応アダマール行列4乗根体グループ〟は、じつは〝正負反転体❶~⓰型対応アダマール行列4乗根体グループ〟ではないのである。
いきなり何をいいだすのか。これらの格子体がいずれも4乗したら単位行列×aのカタチになることは、しっかりこの目でたしかめたではないか?
まさにそこにトラップがあるのである。
アダマール行列4乗根体らの哄笑がきこえる。
ああ、わたしたちはそろいもそろって迂闊であった。
説明しよう。
アダマール行列4乗根体とは、4乗して〝はじめて〟単位行列の整数倍の形をとるもの、のことである。わたし自身、口をすっぱくして繰り返し強調してきたことであるはずなのに……。猛省することしきりである。
さて、〝正負反転体❶~⓰型対応アダマール行列4乗根体グループ(仮)〟を、じっさいに4乗根体(+)(-)の中で見つけてゆこう。
見つけられるのは、16個中12個だけ。
おかしい。あと四つ足りない!?
それもそのはず。よく見てくれたまえ。〝正負反転体❶~⓰型対応アダマール行列4乗根体グループ(仮)〟の中にシレッと対称行列がまぎれこんでいるではないか!!
アダマール行列かつ対称行列は、前にも述べたようにアダマール行列2乗根体にほかならない。つまり、この四つに関しては4乗以前に2乗の時点で単位行列の整数倍の形をとるやつらなのである。
基本構造は単位行列なのであるから、2乗根体を2乗しても単位行列の骨格は保たれたまま。
そのような事情があるゆえ、4乗次元では2乗根体の2乗と4乗根体(+)は姿形的にまったく区別がつかなくなる。
さよう。ここで明らかになったことは、わたしたちが入手したグループは2乗根体と4乗根体からなる混成チームだった、ということ。
正負反転体❶~⓰型変換によるグループ化大作戦。
どうやら、ここでいったん仕切り直しである。