アダマール行列の世界にはなにか奇妙なところがある、ということにわたしたちはじょじょに気がつきはじめている。
四次のアダマール行列 (4×4)は、ごらんいただいたように768という膨大なパターンを有している。前章では、このうち対称行列(64種)に絞りこみ、いくつかの考察をくわえてみた。
ここに抽出された行列(4×4)たちは、いずれも2乗して単位行列の整数倍のかたちをとるもの。
64種類のすべてのアダマール行列 (4×4)が、このような関係を共有しているというのは、ちょっとした驚きであろう。
さて、ここでわたしたちは上記の事実を踏まえた上で、次のような問いを発してみたい。
「アダマール行列 (4×4)の中には2乗して単位行列の整数倍になるものたちが多数存在している。ならば3乗して単位行列の整数倍のかたちをとるものは存在しないだろうか?」
つまり、こういうことである。
結論から言おう。
ズバリ、存在する!!!
しかもその数は、2乗して単位行列の整数倍のかたちをとるものたちの数を優に上回るのだ。まずはこれを観ていただきたい。
どうだろう。
動画に登場していた48種のアダマール行列たち。
これらすべてが、以下の関係式で強く結びついている。
前章でわたしたちは、四次のアダマール行列 (4×4)が数の世界における2に相当するのではと、邪推などしたりもしたが、奇しくもこの場でも、
かような関係が見出されるのは興味深いことである。さて、〝3乗根体〟とでも呼ぶべき、アダマール行列 (4×4)はじつは、上記の48種で尽くされたわけではない。
なんと48種がもう1セット存在しているのである。
先の48種とは、正負の対称性があるようである。
ぜんぶで96種類の〝3乗根体〟
思いがけなくも大収穫である。
せっかくだ。じっくり取り組みたい。
まずは、aに正数を選ぶ3乗根体(+)グループから見てゆこう。
なかなか手強い印象。
パターン(柄)だけに集中しよう。
こうして眺めると、ランダム感満載、カオスの一言。正負反転体や、準–正負反転体のような構造上の対称性はここには、ほぼみとめられない。さりとて、このまま退散してしまうには後ろ髪をひかれる思いがする。
そう、何かきわめて美しい秩序が、この景色の背後にあるような……。
たとえば、ブルーとピンクの割合は全体でバランスがとれているような気がしないか?
気のせいか?
思いついたが吉日。たしかめてみよう。
思ったとおりだ。
どちらも384個の同数。
完全なる均衡。
自明な事実なのか?
わからない。
だが、3乗根体(–)グループにおいてもこのバランスは保たれているようだ。
ここでは柄だけにフォーカスする。
さあ、ともにブルーとピンクの個数をかぞえあげてみようではないか。
やはり、なにかある。
3乗根体たちのパターン(柄)がデタラメチックに見えるのは、巧妙なるカモフラージュ。しかも384+384=768はアダマール行列 (4×4)の総数と奇妙にもピタリと一致している。
おそらく、わたしたちは誘われているのだ。
ならば、この招待を断る理由はない。