アダマール行列との対話はまだまだ終わらない。
いや、このままじゃ、終われない。
わたしたちはアダマール行列(4×4)のn乗根体が、それらの内部に正負反転体構造をもれなく隠し持っているのかもしれない、という驚愕の事実に至つつある。
これまでのところ、2乗根体、3乗根体、4乗根体と順調にやっつけてきたところである。お次は、5乗根体。さっさとやっちまおうぜ、とたぎっている諸君らのことであると思うが、ここで重要なお知らせがある。
それは、アダマール行列(4×4)には5乗根体というものが存在しないということである。ちょうどよい機会であるので、このあたりでアダマール行列(4×4)の世界全体をn乗根体を通して概観してみたい。
まず、アダマール行列(4×4)は総計768種類の格子体からなる世界であることを思い出しておこう。
この768種類の格子体の中から、2乗根体を探し出すのは比較的にかんたんだ。なぜなら、それらはすべて対称行列の形式をもっている。抜粋すると、
3乗根体以降からは、外見から判断するのはむつかしい。基本的にそれが何乗根体に属するかは実地に計算してしらべてみるしかないのが現状である。
さて、3乗根体は全96種あるが、この小世界では格子体は(-)と(+)の二つに分極し、それぞれ区別して示すと、
同じく4乗根体にも(-)(+)の極性があり、それらの格子体の総数は拮抗している。
4乗根体の総数(192個)は、3乗根体の総数(96個)のちょうど2倍、また2乗根体の総数(64個)のちょうど3倍になっている事実は特筆に値するだろう。
ここまでは前章までに述べられたことであり、わたしたちはこれら一つ一つと丁寧に接してきた。それらの全個数をすべて数え上げれば、
さよう。アダマール行列全768種類中、わたしたちがチェックしたのは、まだ352種にすぎない。これを多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところだろう。とにかく、未チェックの格子体はあと、
416種類/768種類。
ゲッ。半分以上残っている……。
が、ここでげんなりしてはいけない。
ある意味でわたしたちはあと一歩のところまで追いこんでいるのである。
というのも、残りすべての416種類のアダマール行列は、すべて6乗根体に属するものたちなのである。そう、6乗してはじめて単位行列の整数倍になるものたちである。
そして6乗根体もまた3乗根体や4乗根体とどうように(-)と(+)の両極に分かれる。
では、ここで質問である。
「6乗根体(-)と6乗根体(+)の個数はそれぞれどのようにあらわれるだろうか?」
諸君らはおそらくこのように予想するにちがいない。
一つの世界では(-)と(+)のバランスがとられていなければならない。よって、6乗根体(-)と6乗根体(+)の個数はそれぞれ同数に決まってる、と。
3乗根体や4乗根体の世界でもそうだった。
だれしもが、そう思うはずだ。
が、ここにきわめて興味深い事実が見出されるのである。
なにをかくそう6乗根体(-)と6乗根体(+)の実像をこうだ。
なんと!!
この世界では正負の対称性は破れているようである。
さよう。
わたしたちが最後に格闘すべき巨大な親玉の登場である。