さて、マテ完が自らの内部にこのような小細胞をもっていることはお話した通りである。
これら内包格子(3×3)たちが自らに自らを乗ずることによっても、その骨格構造は維持されるというのが、前回までにたしかめたことである。
今回はこの〝自〟乗という枠組みから逃れ、〝他〟乗とでもいうべき大胆な行為に及んでみたいと思っている。どういうことか?
異なる小細胞同士の積をこころみるのである。
たとえば、構造固有定数11を共有する❶と❹を選んでみよう。
これらをかけあわせるとどうなるか?
どうか、これを見てくれたまえ。
どうだろう。
じつに興味深いことが起こっていた。そう、行列積によって生成された格子体の骨格のベースは❷に移り変わった。
さて、行列積は積の順序を交換すると別の結果を生じさせるのであった。❶×❹→❹×❶に変更すると、
しかり。この場合、骨格には❸が選ばれることになる。
小細胞間でふしぎなやりとりが行われているようだ。ここはもっと深くさぐってゆく必要があるだろう。
こんどは、この❶と❷をチョイスしよう。これらは構造固有定数をそれぞれ11と5、とたがいに異にする。それゆえ、結果がどうなるか事前に予想するのはさらに困難だ。というわけでやってみよう。
いよいよもって、ふしぎである。
構造は❷が優先された。そして、構造固有定数には11が選ばれている。
かといって、❷や11という定数に特別の優位性があると考えるのは早計というものである。というのも、行列積の順序を変えてやれば、
ここでは構造に❶。構造固有定数には5があらわれる。
つまり、バランスはとれているようなのである。
ちなみに定数としてしばしばあらわれる5と11。これらの数の正体が気になっている者もいるだろう。わたしにとってもいまだ謎ではあるが、ただ一点、これらが以下のような対角格子の総和と奇しくも一致していることは申し上げておかねばなるまい。
いわゆる諸君らの世界では跡(trace)という用語で知られている操作だ。が、なぜ、このような対角和が、複雑な行列の積の果てに、しれっと出てくるのか? 事実、❶❷❸❹同士の間でどのように積をとっても、定数としてはこの二種の数しかあらわれない。証拠をお見せしよう。
ふう。これですべてのペアリングパターンが網羅されたはずだ。ぜひ、構造固有定数のあらわれかたに着目してほしい。見つめれば、見つめるほどに、なにか曰くいいがたいくも整然とした硬質な美しさががこの世界にはみちみちているのが感じとれるはずだ。
あるいは、この演算結果をもとに❶❷❸❹間でつむがれる、次のような関係を指摘することもできるだろう。
もはや、この領域の背後に厳然としたルールが配されていることは、ほぼ疑いようがあるまい。