マテサンドの法の真の姿とは?
きわどいところまで追い詰めたわたしたちであったが、あと一歩というところで、思わぬ平手打ちをくらってしまった。気をとりなおしてゆきたい。
マテサンドの法の内部に見つかったほころび。それは、ゲバールの内包格子の選び方によって、法の主張から逃れるものが存在してしまうということだ。
この傷をわたしたちは、なんとしても修復したい、という願望をもっている。それほど、いま見ている法は捨てがたい形式美を宿している。
執着しすぎだろうか?
わがままリクエストだろうか?
いや、そもそもそのような修正は可能なのか?
二つの格子体が、同時に法の主張に沿うように、法を書き換える方法などありえるはずもない。常識的に考えればそうだ。もし、×をくらった格子体にあわせて法の一部をうまく書き換えられたとしても、書換前の法において○だった格子体が、○のままでいられるはずがない。
あちらを立てればこちらが立たず。
二つの格子体が両方○をもらって、がっちり握手。
などという光景は、現実の世界で滅多にお目にかかることはない。
法を救う方法があるとすれば奇蹟……。
いや、それがあるのだ。
見ていただこう、たった一つの冴えたやりかたを。
なにやら途中で、プレーン超格子体がアクロバティックな動きをしていたようだが…。さよう、あのとき、プレーン超格子体は自らを見事、転置させたのである。
一ど、見ただけではよくわからなかっただろう。
同格子体正負反転体❷型にも模範演技をしていただくことにしよう。
アダマール積の寸前に見せるかれらの怪しい動きに、とくに注目されたい。
もうおわかりだろう。
ここで鍵を握っていたのは転置行列。動画で示されていたことをそのまま法に書き下すと、
法は刷新された。
外見上はこれまでのものとほとんどかわらない。
ビフォーアフターの違いはこの部分だけ。
マイナーチェンジであるが、機能的には決定的な変更点である。
さて、問題は、このような法の書き換えを行うことによって、以前までの結果に影響を及ぼさないでいられるのか、ということだ。
大丈夫だ、ということをともに確認しておこう。
その秘密は対称行列という構造にある。
先に取り扱ったこの格子体は主対角線を中心として対称性を有しているという事情により、転置をとってみたところで自らの外観を不変に保つ。
それゆえ、アダマール積に関してはこのようなことがいえる。
つまり、法における適用対象格子体が対称行列である場合、改訂前、改訂後の法を同時に成立させてしまう、ということである。さよう。これまでわたしたちが見てきた適用対象格子体の多くは、この手の対称行列であったことにいまさら気づくだろう。
他にもマテオロス系に関しては、あらゆるaについて対称行列であることが約束される。
ということは、
同じように法を書き換えてもノープロブレムということだ。
ためしてみてもいい。
今回は、この二つの格子体に登場してもらうことにしよう。
正負反転体❷型についてもみてみる。
法は安泰である。さて、あらゆるマテオロス系格子体 、あらゆるゲバール系格子体において法が成立するだろうことはわかった。ここでさらにわたしたちは適用対象格子体∀の範囲をさらにおしひろげたい。
さよう、ゲール構造である。
以前にも述べたように、マテオロス系もゲバール系も構造的にはゲール系に回収されてしまう存在たちである。
もし、ゲール系にまで適用対象格子体∀が及んでいることがわかれば、わたしたちは一挙にマテサンドの法を最終形態にまで持ってゆくことができるはずだ。
これらのマテサンド積がどのような結果を生みだすか、ここは手間を惜しまずに代数的解決を図ることにする。
どうだろう。
じっくり見つめてみてほしい。
ごちゃごちゃしているように感じるのは気のせいにすぎない。
各格子の赤い部分には、そのままの形でゲール構造が保存されている。
そして、ゲールらに乗ぜられるこの部分。
これらはすべて同じもののコピー。
ほかでもない、二つの格子体のアダマール積総和を表現している。
よって、わたしたちは自信をもって、マテサンドの法のさらなる拡張を提示することができる。
美しくも、不思議な主張。
はたして、これがマテサンド法の最終の版なのか?
そう願いたい。