さて、ここまでの数章をふりかえっておこう。
わたしたちは、n乗体構造不変の法の適用範囲をマテオン(マテオロス系)→ゲバール系→ゲール構造体というように広げ、かつ、法自体を二間積–対角和変換の法へとより柔軟な形に変形したのだった。
ここで一つの重要な気づきがある。
なにか?
かつて、わたしたちがマテオロス系に関して得た法は、そのままゲール構造を持つ格子体にも適用しうるのではないか?
この可能性に魅力を感じないわけにはいかない。
そこで今回は、マテオロス系における秘法〝マテサンドの法〟に再登場を願うことにする。
まずは〝マテサンドの法〟とはいかなるものであったか、思い出しておきたい。
これはマテオロス基準❶型における法である。
これの主張するところを無粋にも言葉で翻訳すれば、「どんな格子体(4×4)の構造も両側からマテオロス基準❶型ではさみ、その行列積をとることにより、マテオロス基準❶型の構造へともどされてしまう」云々。
まあ、具体的にためしてみるがよいだろう。
とりあえず、a=1と置いてみよう。
全格子数オール1。
見た目はシンプルすぎるが、これとて立派なマテオロスである。
次に具となるべき中央の格子体にプレーン超格子体をチョイスする。
じっさいにこのプレーン超格子体を両側からマテオロスではさんで行列積をとると、
全格子には同じ数がならぶ。
さよう。のっぺらとした表情は、マテオロスから引き継がれたものだ。
さて、ここで諸君らはこの136という数がどこからやってきたのか、気にかかっていることだろう。その驚くべき正体はいずれ明らかとされるが、ここでは、
奇しくもプレーン超格子体の全格子数の総和となっている、ということを指摘するにとどめておこう。そう、プレーン超格子体は構造的個性を失くしてしまうこととひきかえに、このような自らの痕跡をしっかり遺しているのである。
マテオロス基準❶型だけでは、ちょっと物足りない。
正負反転体たちにも出てきてもらおう。
マテサンドの法は、これらすべてのの正負反転体においても有効である。
興味深いことに、マテオロス❷型をバンズに採用すると、
このように全格子には0がならぶ。
すべてがきれいに消失するという現象にばかり目を奪われがちであるが、これとて法の主張に適っているのである。
では、正負反転体をバンズに用いれば、すべてこのような0消失現象が起きるのか?
いや、調べてみると、そうとはいいきれないことがわかる。
たしかに0消失を引き起こす正負反転体も数多く存在する。
❷型以外にも、これらがそうだ。
だが、上記に挙げた以外の四つの正負反転体については、
これらにあらわれる数はそれぞれ異なっているが、いずれも2の累乗数がベースになっているようである。はたしてサンド固有定数λがいかにして生成されているのか。
ともかく謎を残しつつも、強力なマテサンドの法である。
次章では、いよいよこの法の拡張可能性を探ってゆきたいと思っている。