この章では、ふたたび、正負反転体と準–正負反転体を取り上げる。
かるくおさらいしておこう。
これは16種の正負反転柄であり、諸君らが望みさえすればどのような格子体にもこの柄を衣せることができる。ただ、わたしたちはもっとも基本的な形式として、ブルーに1を、ピンクに-1をわりあてた次のような格子体を考察の対象としてきたのだった。
このような正負反転体については、うれしいことに累乗の法というのが成り立つ。
では、準–正負反転体とはなんであったか?
これを基本形として、これらの90度回転体によって得られる格子体。
このようなものたち含め、わたしたちは準–正負反転体系として扱ってきた。
これらが正負反転体の有する能力にわずかに及ばず、〝準〟という位置に甘んじている理由の一つには、累乗の法を成立せしめないということ。ただし、その代わりといってはなんだが、かれらには、こんな法が賦与されている。
そう。準–正負反転体らは奇数乗のときだけ、みずからの柄を取り戻すことができる。この事実だけをもってして正負反転体よりも劣る存在たちと断ずるのは気がひける。もちろん、諸君らの中には準–正負反転体推しの者たちもいるだろう。そう、準–正負反転体は準–正負反転体で正負反転体たちにはとうてい不可能なことをやってのけたりもする。
あくまでも〝準〟という冠称は両者を区別するために用いる便宜的なものにすぎない。階層主義などうっちゃって、両者を同格のものとして扱おうではないか。いっそそういってしまいたい気もするが、やはりどうしてもこの章で述べておきたいことがある。
まずは、正負反転体より❷型。
そう、われらがマリス/タリス型にご登場願うことにしよう。
この柄の意味をよく知るわたしたちにとっては、威風堂々、貫禄の佇まいである。
さて、この正負反転体❷型をつかって何をしようというのか。
わかっていただけたであろうか?
準–正負反転体らに関与されても正負反転体❷型は、自らの本質的な内部構造を不変に保つ。
さて、この光景を脳裡にやきつけた上で、こんどは❶型。
同じことを、この❶型でこころみてみたい。
なんとなんと。これをデジャビュと呼ぶにはあまりにもデジャビュである。❷型→❶型に変更しても行列の積の結果にはなにも影響を及ぼさない、というのである。
ちなみにこの積で得られる格子体は❷型の2乗体にほかならない。
驚く勿れ。
これと類する現象は、探せば他にも見つかる。
正負の入れ替わりが起こっているものも見受けられるが、柄だけに着目すれば、ここでも❷型が生成されていることがわかる。
つまり、これら四つの正負反転体は、準–正負反転体とその90度回転体を両サイドから関与されても、正負反転体の内にとどまるということ。
いったいこれは偶然なのか?
どうやら大々的にしらべてみる必要がありそうだ。