さて、わたしたちが入手した正負反転体❶~⓰型のアダマール積表。
はたして、ここからなにを読み取れるだろうか。
まず、アダマール積に関してはA×B=B×A(可換)であるので、この積表は、主対角線について対称的な配置がなされているはずである。実際に色分けしてみよう。
サイズが大きいので、なかなか対称美を感じていただくことはむつかしいかも知れない。別の言い方をすれば、積表(16×16)を行列と見立てたとき、この行列(16×16)の転置行列をとっても姿形はまったく変わらないということである。
この事実は基本としておさえた上で、やはりわたしたちが注目したいのはこの部分。なにが起きているか、よく見てほしい。
わかるだろうか。
この小エリア(4×4)においては、❶❷❸❹型しかあらわれず、一つの閉じた世界を形成している。
ごらんいただいたように、❶❷❸❹型はお互いどのようにペアをとっても、そのアダマール積によって生成される格子体は❶❷❸❹型の形状にとどまる。自給自足。やりくり上手。You name it!!
驚くべきは、ペア同士の結合において、
アダマール積でなく行列積を用いたときに引き起こされる現象。
美事。
あとかたもなくなってしまった……。
❶❷❸❹型は、自分自身以外とペアを組むことにより、零行列を生成。
積表としてあらわすならば、
0消失にばかり目を奪われてはならない。
自分自身×自分自身=自分自身。自乗によってもアイデンティティが保持、という事実も特筆すべき。
※ここでは柄だけに注目している。
ということで、もはや❶~❹型が正負反転体六人衆におけるボス格的存在であることは、ほぼ疑いようがない。
いや、気づいた者もいるかもしれない。さよう。これら四つの存在たちは、諸君たちの星では〝クラインの四元群〟という名で知られているグループ構造をなしている。
彼らの相関関係を図解すれば、
と、このように簡潔に表現することができる。
さて、〝クラインの四元群〟はフィジカルな存在というよりは、構造上の概念であり、正負反転体❶~❹型以外の場所にも宿ることができる。代表例として、
左右の区別のあるオブジェクトの180度回転変換。
正負反転体❶~❹型とは、一見、何のつながりもなさそうなのだが、それゆえに構造の骨格が同一視されるというのはよけいに不思議だ。
もう一つ。
思いがけない場所に〝クラインの四元群〟が出現する事例をとりあげたい。
4×4サイズの格子体。
正負反転体❶~❹型と同じサイズである。
が、これら四つの格子体と正負反転体❶~❹型との決定的なちがいは〝クラインの四元群〟として坐する際に用いる演算の手法である。
さよう。
アダマール積でなく、ここで使われているのは行列の積。
クラインの四元群。
驚異の変幻。神出鬼没である。