準–正負反転体とその90度回転体は異グループ間でペアリングをはかるという事実をはからずもわたしたちは知ってしまった。
このようなペアを組むことにより発現される0消失力は強力で、そのパワーはプレーン超格子体にまでも及びうることも前章で実証済みである
さて、今回、わたしたちはこれらのペアをつかって、あることをこころみたい。
あることとは?
さよう。
アダマール積である。
忘れていたとしても大丈夫。
演算としては、行列積よりもアダマール積のほうが、ずっと直感的に把握しやすく、またなによりも手間もかからない。
というわけで、さっそくだが、これを見ていただこう。
どうだろう。なにか目覚ましいことが起こっていることだけは感じてもらえたと思う。四つのペアが最終的に一つの同じ形式の格子体に集約されていた……? そして、その形式にはきわめて特徴的な…。
まさか!?
ここは、あわてず、じっくりいこう。
動画で示されていた一連のプロセスは、初見ではつかみがたい。
なので、詳しく再現してみたい。
まずはペアリングされた者同士でアダマール積がとられていたはず。ちなみにアダマール積に関しては積の順序は関係なく、A×B=B×Aだ。
とにかく、ここにあらわれるのは、まったく新しいパターン(柄)。これらは正負反転体にも準–正負反転体にも属していない。
次に動画で行われていたことは?
そう、生成された四つの格子体のコピー(複製)がとられ、転置行列へのトランスフォームがはかられたのであった。
転置行列とはなんであったか?
操作はけっしてむつかしくはないので、この変換法はしっかりと頭に入れてほしい。
興味深いのは、四つの格子体のそれぞれの転置行列はよく見ると、もとの四つの格子体のいずれかの形をとり、これらはすべて転置という変換に関してはグループ内で閉じた体系の中に住んでいるということだ。
さて、最終工程として、四つの格子体とその転置行列の合成が、今度はアダマール積ではなく行列積によって仕上げられる。
すべてが同一の格子体を生成する。
しかも、この形式。
その型は、あきらかに単位行列を範としている。
なにを得たのか?
他でもない。この四つの格子体は、諸君らの星でつとに知られている〝アダマール行列〟そのものである。
〝アダマール行列〟とはいかなる格子体か?
それついては次章以降、詳細にあつかってゆく予定だ。とりあえず、区切りがいいので、この章はいったんここで筆を置くことにするが、最後にもう一つ。
これら四つの〝アダマール行列〟が、ちょっとした操作を経て、わたしたちのよく知っている〝ある姿〟へと変容する事実。
〝ある姿〟とは、正負反転体の中でも特異な位置を占めているアレだ。
さよう。相愛数とも切っても切り離すことができない、あのかたち。
どうかその目でたしかめてほしい。